新・現代文レベル別問題集 1超基礎編―高校現代文入門がクリアできたら参考書の効率も上がる

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タイトル新・現代文レベル別問題集 1超基礎編
出版社ナガセ
出版年2021/12/10
著者輿水 淳一、西原 剛
目的高校現代文入門
対象読解力の基礎力を上げたい人
分量240ページ
評価
AI重要語句と背景知識を拡張する
レベル日常学習教科書基礎教科書標準入試基礎入試標準入試発展
※全統模試目安 [教科書基礎=40~45][教科書標準=45~50][入試基礎=50~55][入試標準=55~65][入試発展=65~70]
※入試基礎=日東駒専、地方国公立 入試標準=MARCH、関関同立、準難関国公立(地方医含む) 入試発展=旧帝大上位、早慶、医学部
加筆修正の履歴

※本記事は公開以降、内容に変更はありません。

脳内活動を参照できる問題集―現代文を解いているときの思考を知る

 本書は2021年に改訂された現代文のレベル別問題集になります。本書シリーズは超基礎編から最上級編までの6冊があり、本書「超基礎編」は大学受験基礎・高校1・2年生レベルにあたります。超基礎編の難易度というと「子供でも簡単に解ける」というイメージを抱くかもしれませんが、設問やその論点によって難易度が調整されているだけで、高校現代文は大人が読んでも違和感のない文章になっています。強いて挙げるなら「超基礎編」からイメージされる内容は一般的な中学生向けの現代文と思います。なお、全国有数の中高一貫校や難関高校の入試現代文は例外です。このレベルは大学入試に匹敵しますから。

 なぜ、本書を取り上げたのかというと、現代文の問題集は多いと言えば多いものの、本書の超基礎編の難易度に関しては稀少だったからです。もちろん、一般的な中学生向けの入試現代文や問題集を用いればどうにでもなるのですが、中学生向けの問題集は明らかに子ども扱いしたレイアウトや解説になっている場合もあり、学び直しを含む高校生以上にとってのより良い問題集が見つけづらく、薄くて使い勝手の良いものなど勉強しやすいものを追求すると本書のような問題集を土台にしたくなる事情があります。

 しかし、どんな高校生にも本書の超基礎編から取り組んで問題ないのかというと、そんなことはありません。高校偏差値で線を引くなら、偏差値60以上であれば本書から取り組んで問題ないでしょう。現代文に多少の苦手意識があっても大丈夫です。むしろそういう人にはちょうど良い難易度になっています。偏差値55~60の場合は、現代文が得意なら問題なし。苦手だと本書の解説がそこまで力にならないかもしれません。偏差値55未満でも現代文が得意なら問題ありませんが、このレベル帯は苦手であることを自覚できない場合もありますから、小学・中学課程の漢字を完璧にしたあとに高校で要求される漢字・語彙をある程度身につけてから取り組むのがオススメです。当然のことながら本書は問題集=アウトプットなので、前提知識が足りない分だけ力になりません。なんとなく読んで、なんとなく解いて終わりになる懸念が高まってしまいます。もちろん、他の偏差値帯でも『高校の漢字・語彙が1冊でしっかり身につく本』などに取り組んでおくに越したことはありません。

また、本書は問題を解くことが前提ですから、純粋な読解力を上げるというよりも、現代文の解答力に比重が置かれています。これは前回の記事「高校生のための哲学・思想入門」にて近いことを述べているのですが、読解力と解答力は少し違います。本書のような簡単な問題だと解答力だけで解けてしまうことがあるため、それによって読解力があると誤認しないように注意。ですので、文章を読み、解説を正しく理解すること。その方法が本書の序章にある「文章を読むとはどういうことなのか」と特典動画「読解方略」でまとめられているので必ず視聴しましょう。

本書の構成と解説の一例

 超基礎編は簡単と言えば簡単ですが、1超基礎編と4中級編(共通テスト・中堅私大レベル)には大きな差があるかというとありません。さすがに5上級編(有名私大・上位国公立レベル)と6最上級編(難関私大・難関国公立レベル)とは差があります。どういうことかというと、超基礎編から中級編までは「0→1」の問題をクリアできるかどうかにかかっているということです。なんとなく読んで、なんとなく解くことから脱却すること。その上で漢字・語彙が押さえられていたら4中級編までは一気に駆け上がります。それ以降は硬質なテーマ、設問が要求する論理の緻密さなど一段階も二段階も上の思考力の問題が生じるイメージです。

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構成・内容第1講「役に立たない読書」―林望 [実践女子大(改題)]
第2講「日本の一文30選」―中村明 [オリジナル問題]
第3講「多数決を疑う」―坂井豊貴 [オリジナル問題]
第4講「人新世の資本論」―斎藤幸平 [オリジナル問題]
第5講「子供の領分」吉行淳之介 [オリジナル問題]
第6講「戦後精神の経験II」藤田省三 [中央大]
第7講「できる人はどこがちがうのか」斉藤孝 [名城大(改題)]
第8講「イメージの心理学」河合隼雄 [センター試験]
第9講「デューク」江國香織 [センター試験]
第10講「メリー・ゴー・ラウンド」三浦哲郎 [センター追試験]
特徴脳内活動の解説―現代文ができる人は文章を読むときに何を考え、どのように理解しているのか。その思考の過程を簡潔な文章で視覚化。
動画読解方略―「基本の読解方略」東進ブックスYouTubeチャンネル※ダイジェスト版―本編(約55分)は書籍購入特典としてQRコードがあります
その他・重要語句のまとめあり
・全文解釈あり―英文解釈のように一文ずつ解説が添えられている
・生徒からの質問コーナー―現代文に関する素朴な疑問に回答。ex.「現代文に出てくる難しい言葉の意味がわからないんですけど……。」

 使い方に関して1つだけ注意点があります。現代文の参考書では文章の構造解説が必ずあるのですが、一文を正確に読み進めたい段階にある人は余裕があったら、基本的に最初は無視しても構いません。構造は抽象度が少し高い話になるので「文章には必ず構造があること」をわずかに意識する程度で詳細に理解する必要はありません。その後、復習で何度か繰り返し読んでいると、自然と構造を捉え始める=思考がメタ化する段階が訪れてから改めて理解に努めます。普段から読書習慣があり、大好きな本を10回、20回と繰り返し読むような人なら構造の話についていけると思いますが、現代文が苦手な人や本を読む習慣がない人は後回しで良いと思います。

 本書は全体的に完成度が高い。解説のレイアウトも見やすく、価格からしても満足度の高い一冊。読解方略の動画一つでペイできてしまいます。本書は2021年出版ですが、高性能な現代的参考書といった印象で大人は驚くでしょう。今の子供たちの受験勉強の環境、少なくとも参考書に関しては恵まれていることを改めて実感しています。加えて、そういった参考書だからこそ、とにかく隅々まで読んでみるだけでも成長する期待は持てます。

自分が文章の意味を理解しているのか、していないのかに自覚的であれ。さっきの文章を理解できたかどうかが大事なのではない。そうではなくて、自分が理解しているかどうかを、自分でちゃんとチェックできていたかどうか。それが大事。自分がちゃんと理解できていないことに気づかずに文章を読んでいる人はずいぶん多い。まずはその無自覚な状態から脱却しよう。
新・現代文レベル別問題集 1超基礎編 P10 序章「文章を読むとはどういうことなのか」より引用

 この引用の考え方はとても大切です。ただ、引用以前に現代文、大きく言うと勉強が苦手な人はそもそも読むことすらできない場合が多いことも押さえる必要があります。SNSでの短文コミュニケーションやショート動画の影響も強い現代の子供たちは、おそらく文学全盛時代の大人の子供時代に比べたら遥かに文章を読む体力がなくなっています。勉強の一歩目は「考えること」ですが、二歩目は「読むこと」と言って良いかもしれません。理解を度外視にしても読む体力があるならだいぶ楽です。優れた参考書ほどただ読むだけでも力になる部分はあるわけで、それよりもさらに成長したいと思った時にはその引用の言葉を思い出してほしいと思います。

当サイトでは『中学国語読解』を超基礎の基礎に位置づけています。本当に現代文に苦手意識がある人の最初の一冊です。このレベルから取り組む人は必ず『中学国語文法』も併せて学びます。

現代文は習慣の力―現代文攻略ではなく、習慣攻略の視点

 現代文は習慣の影響が強く出てしまうところが難題です。それを言ったらどの科目もそうではと思うかもしれませんが、私たちの日常的な行為である「コミュニケーション=言葉のやりとり」が数えきれないほど積み重なった結果、自らの語彙力となり、背景知識にもなり、それらを網羅的に取り扱う現代文という科目、文章を読んで答えるといったシンプルなテストではとりわけ影響が大きいのです。現代文のときだけ特別な知識(漢字・語彙)や思考(解答力)を引き出すこともあるにはありますが、身体に馴染んでいない知識と言いますか、大学入試では特に母国語は運用力まで厳しく要求されますから、本当にただ知っているだけでは通用せず、馴染ませるためには普段からの心がけ、結局は習慣という話になってしまいます。これは英語を想像してもわかりやすい。

 では、習慣をどのように構築するか。以前に紹介した『複利で伸びる1つの習慣』などを参考にしながら、より良い習慣について考察することから始めると良いと思います。受験勉強は勉強計画に基づいた勉強を毎日繰り返すこと=習慣化が原則として必須になりますから、習慣について考察・検討するにはちょうど良い場です。子供の場合、とにかく有名な参考書に飛びつくように勉強し始めるかもしれませんが、そこは少し待ってほしい。これは100m走ではなく、100kmマラソンに等しいことに取り組むので準備運動から考えてほしいのです。最悪、途中で身体を壊して再起不能に陥る危険まであります。本当にその計画に無理はないのか。頓挫したときにはどのように修正するのか。仕事のように、そこまで織り込んだものを子供(高校生)であっても考えるべきと思います。

 そして、もう一つ現代文は勉強ではなく、習慣であるとしたとき、端的に言えば頭の良い人の話をよく聴くことを推奨します。読むことが十分に行えるなら読むことでもいいのですが、習慣化しやすく、勉強が苦手な人も取り組みやすいのは「聴くこと」だと思います。本書で言うと「読解方略」の講義動画をしっかりと視聴することが大切。個人的に現代文をはじめ、勉強に必要な論理性を養うには「論理的なもの」に触れ続けることを有力視しています。論理は音からもつくられる。身近にいる「頭が良いな」と思う友人との会話を増やすのも有効です(それを目的に付き合うわけではありませんが)。論理的な思考も話し方も伝染するのです。さらに言うと論理に限らず、本物や正しいものに触れると、それが一つの基準となって自分自身や対象の欠点を浮かび上がらせ、修正するための思考習慣に繋がります。これは本物のミュージカルを知りたいなら、NYのブロードウェイやロンドンのウエストエンドに行ってみるに近い話です。とにかく本物(=目指すべきもの)の基準をいち早く知っておくことの利点は大きく、過去問から取り組むのも同じ話ですね。

しかし、あまりに自分とかけ離れた本物だと解像度が追いつかない可能性もあります。それでも感覚に浸潤していくと思っていますが、具体的な修正点を浮かび上がらせるにはもっと身近な人を参考にするのが良いでしょう。友人や先生、親あたりがちょうど良いかもしれません。尊敬する大人を見つけるでも良い。そうやって自分自身の知識や思考を建設的に支えてくれる人を揃える視点は、子供にはないでしょうからやってみる価値はあると思います。というより、まずはそこから始めてほしいかもしれません。尊敬できる人との出会いは人生においても大きいので、子供のうちは成長できる意味で甘えられる大人の背中を追うのもありです。

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