新課程 チャート式基礎と演習数学[白チャート]―大量の問題で盤石な基礎固め

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タイトル新課程 チャート式基礎と演習数学 数学IA 数学IIB 数学III 数学C
出版社数研出版
出版年2022/02
著者チャート研究所
目的教科書基礎~入試基礎・インプット型
対象現役生から大人の学び直しまで(全統模試偏差値55程度まで)
分量数学IA+IIB+IIIC(例題+TRAINING+EXECISE+実践)2191題
評価
AI同じ論点の難しい問題を生成
レベル日常学習教科書基礎教科書標準入試基礎入試標準入試発展
※全統模試目安 [教科書基礎=40~45][教科書標準=45~50][入試基礎=50~55][入試標準=55~65][入試発展=65~70]
※入試基礎=日東駒専、地方国公立 入試標準=MARCH、関関同立、準難関国公立(地方医含む) 入試発展=旧帝大上位、早慶、医学部

基礎固めなら白チャート

 本書は数研出版から出版されている非常に有名な数学の参考書です。入試数学の網羅的対策を行うならチャート式の名前を聞いたことがない人はいないでしょう。本書はそのシリーズの「白」にあたります。本書シリーズには「白・黄・青・赤」と4種類があり、特に「青」は自称進学校から全国有数の進学校まで幅広い場所で配布されることもあって有名です。数研出版は数学の教科書での採用率も高く、また物理や化学、生物などの理科科目では『重要問題集』が受験生の間ではよく採用されています。数理科目なら数研出版と言っても過言ではない信頼と安心があります。

 本書シリーズの「白・黄・青・赤」の4種類は難易度別に分かれており、「白」は最も易しい位置づけです。チャート式シリーズはどれも基本例題から始まるため、最も難しい「赤」であっても例題自体はそこまで難しくありません。そのため、白よりも難しい位置づけにある「黄」や「青」であっても基礎固めとして用いられることがあります。しかし、もともとチャート式は基本問題を備える教科書や教科書傍用問題集と棲み分けた位置づけにあるため、本当の意味での基礎固めとしては問題数が足りずに十分には機能しません

 その点で本書「白」は特殊な位置づけにあり、チャート式シリーズの中では唯一基礎固めとして正しく機能します。というのも、本書の基本例題は教科書基礎レベルの素直な問題から始まり、その上でチャート式らしい大量の演習を行えるからです。その他の「黄」や「青」は基礎固めというより、いわゆる解法暗記を地で行く参考書になっていると考えた方が誤解が少ないと思います。高校数学の基本計算や解法を身につけることを意図する「白」に対して、入試を強く意識する「黄」と「青」というイメージです

チャート式は非常に問題数が多いため、解法暗記として取り組むにしても挫折率は高くなっています。周回も現実的ではなく、しかもそれが効率が良いというわけでもありません。しかし、本書「白」に限っては問題が易しいために大量の問題を解いて身体に刻み込む使い方が可能です。

多くの受験生が白で十分な理由

 文系理系によって違いはあるものの、多くの受験生は「白」から取り組むのがベストと考えます。チャート式シリーズで最も有名な「青」は主に入試基礎~標準を網羅する参考書なので、基本例題の簡単さに釣られて取り組むと痛い目に遭います。「黄」や「青」の基本例題は意外と変化球が多め。最初から「青」に取り組める人とは、教科書レベルならほとんど問題がないと言える人、かつ難関大理系志望と考えて良いと思います。

 それ以外は教科書の復習が必須ですから、となると「白」で基礎固めをしてから受験戦略を立てていく方が良いでしょう。中学生や高校1年生の先取りとしても「白」が無難です。なぜ、ここまで「白」にこだわるのかというと、数学は基礎固めが非常に重要なため、中途半端に入試対策の解法暗記に取り組むと「問題と解答の丸暗記」に陥って応用が利かなくなるからです。挙句に挫折してしまうと捧げた時間の多くを無駄にします。それを防ぐには“ここまでならできる”という土台を着実に大きくしていくことです。

チャート式参考書 レベル表 https://www.chart.co.jp/goods/item/sugaku/level/level3.html

 こちらは公式サイトで提供されているレベル表ですが、実際には同じ例題を見比べても「白」と「青」では大きく異なります。白の場合、定理や公式も例題として扱い、数学が苦手な人にも配慮した易しい問題構成となっている=基礎固めを重視しているのに対して、教科書との重複を避ける「青」に関してはすでにそうしたものがわかっている前提で構成されています。押さえておくべき基本を正しくイメージできるのは「白」です。

 これらを考慮した上で改めてレベル表を調整すると以下のようになります。

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教科書基礎教科書標準入試基礎入試標準入試発展
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教科書基礎教科書標準入試基礎入試標準入試発展
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教科書基礎教科書標準入試基礎入試標準入試発展

 チャート式に取り組む理由の一つには、大量の問題を解くことによって自分自身の当たり前のレベルを上げることにあります。英語で言うと、単語を見た瞬間に理解できないと問題を解くことすらままならないですよね。いくら簡単な問題であっても解くことに時間がかかってしまうと、時間制限のある試験ならなおのこと、それよりも難しい問題を解く際には考えたい論点まで辿り着かないわけです。加えて、応用問題を基礎的な知識に分解できないと、応用問題に取り組む意味も希薄になります。

 では、どれほどの問題数を解くべきか。これには様々な議論がありますが、少なくとも基礎部分ほど当たり前にする必要がある、すなわち白チャートの問題数に限っては否定されにくいと思います。率直に理にかなった参考書です。もちろん、高校偏差値65以上の進学校に通い、学習塾などで中学時代から大量の問題を解いていたような人にはチャート式の問題数は過剰に働く可能性があります。この場合なら「青」に一通り目を通して、わからない問題の解法だけ器用に暗記すれば良いでしょう。

「黄」と「青」の違いにも触れておきます。「黄」は入試基礎を中心に教科書標準~入試標準までを幅広く網羅しているのに対して、「青」は入試基礎から標準を盤石にしつつ発展まで触れています。到達レベルで言うと「黄」は全統模試60~65、「青」は65以上といったイメージです。「青」を完璧にできるならほとんどの大学の合格点に達するでしょう。

使用開始時期・問題数

 チャート式の問題数はかなり多いため、使用開始時期は当然考えなければなりません。遅い時期から取り組んで1周もできないくらいなら、もっと問題数の少ない『入門基礎問題精講』や『Super Quick 数学』『文系の数学 重要事項完全習得編 改訂版』に取り組んで少しでも周回するべきです。中学生と高校1年生の先取りならいつでも可能、受験勉強として取り組むなら遅くとも高校2年生夏休み開始までには取り組みたいところです

 また、「黄」や「青」の場合は問題の取捨選択が重要になる場合もありますが、本書「白」なら難しく考えずに片っ端から解いてしまって良いと思います。これだけ解けば呼吸をするように基本問題は解けるようになるので、入試基礎以降の積み重ねが効率的に行えます。さらに言うと、本番の試験でも絶対に解かなければいけない問題を解ける心理的な利点は大きなもので、もし「黄」や「青」に取り組んで基本問題を落とした上に、発展問題もいまひとつ解けないといった事態になったときの精神的なダメージは受験結果を左右しかねません。

白は基礎固めに有用ですが、高校数学の本当の基礎は中学数学です。なので、白チャートが力になっていないことを直感したときには潔く中学数学まで戻りましょう。その際は『増補改訂版 中学校3年分の数学が教えられるほどよくわかる』が教科書の代替として優秀です。

チャート式の使い方―過去問分析を終えたあと

STEP
例題を解く―必ず解き方をメモすること

1周目は例題(基本・標準・発展)を解き、余裕があったらTRAININGとEXERCISESも解きます。基本の基本問題は言われるがままに解くだけで十分ですが、少し頭を使わないといけない問題は解き方(論点)を必ずメモしておきます。また、1周目は「どこのページにどんな問題があったのか」を把握することも重要。本書を終えたあと、往復して基本を確認することが頻繁にあるからです。
新課程 チャート式 基礎と演習数学I+A 基本・標準例題完成ノートパック』—例題の周回に便利なアイテム

STEP
過去問・アウトプット型問題集にも取り組み始める

1周目を終えたあとは、本書よりも難しい入試基礎以降の問題集に取り組みながら復習します。入試基礎以降の知識を得ながら、本書に戻ることで問題に必要な基礎知識を確認・定着させることができます。使用する問題集は第一に現在の実力に最も近い『併願校の過去問』です。過去問だけだと問題数が足りないときは『1対1対応の演習』などのアウトプット型問題集を加えます。※厳密には1対1対応の演習はハイブリッド型です。

STEP
自問自答しながら復習する―セルフティーチング

「STEP.1」と「STEP.2」を経て、白チャートの知識をどのように整理すれば良いのか、応用問題に活用できるのかなど得点に最適な考え方に気づき始めていると思います。そういった点を押さえながら、自分自身に教えるように復習します。1周目は最初から最後まで手を動かして解きますが、2周目以降は問題を見た瞬間に解答が思い浮かばないものと苦手問題だけに絞ります。最終的には手を動かさずに英単語のように「問題→解答」を頭の中に思い浮かべるだけです。

STEP
次のレベルの問題集に比重を移していく

STEP.2で使用した問題集(過去問以外)をメインに使用します。できるだけ早くアウトプット中心にするのが有力。もちろん、チャート式のインプットをできるだけ正確に行うに越したことはありませんが、今はAIによって多少力が足りなくともアウトプットの質は高められます。以前まではアウトプットの質を十分に高められるまでインプットを丁寧に行う必要がありました。

 チャート式の欠点は膨大な問題数によって悪しき解法暗記に陥り、全く応用力がつかないことにあります。この欠点を解消するには、最初からアウトプットを想定することです。チャート式を何周もするのではなく、アウトプットからインプットの重要性に気づき、一刻も早くチャート式の本当の使い方を理解すること。でなければ、チャート式の問題を解いて満足しているだけになります。

だからこそ最初に過去問に取り組み、解きたい問題(=目的)を明確に意識しておくことが大切です。最初に取り組む過去問は解くことが目的ではなく、逆算思考と問題意識を植え付けるのが目的です。たったこれだけの学習順序だけでも合否を左右するほどです

白チャートの問題は完璧になったのに、本番の問題が解けないとき

 チャート式の問題と解答が瞬時に頭の中に思い浮かび、単元ごとの問題の種類や解法も一通り把握しているのに本番の問題が解けないことがあるかもしれません。難しすぎる問題は当然解けないとしても、難易度からして解けるはずの問題が解けない場合は問題の意図と知識の引き出し方がわかっていないことが大きいと思われます。
 チャート式のようなインプット型の参考書は単元ごとに分けられていることもあって「問題の意図を掴むこと」が簡単です。言われるがまま解法を適用すれば解けてしまいます。しかし、本番はランダム出題で問題の意図を把握するところから考えなければなりません。問題は何を要求しているのか。どの解法を適用すれば良いのか。このわかりやすい解決方法は「アウトプット型問題集」に取り組むことです。すぐに答えを見ずに自分の手札(チャート式で得られた知識)から答えまでの道筋をとことん考え抜きます。
 そして、そういった作業を何度も繰り返していくと、問題と解法の分類がどんどん進みます。適切なアウトプットが高い学習効果を生むのは、ある意味で不自由が思考力を育てる、全身運動のように普段使っていない頭の筋肉を刺激するからです。さらにアウトプットは逆算思考を強化し、効率の良いインプットにも繋がります。「きっとこういう問題が出てくるだろう、だからここを要点として覚えておこう」と予測できるようにもなるわけです。こういった経験が少ないうちは覚え方に無駄が多く、覚えたものの応用を考えられないのは仕方ありません。誰しも一度は通る道です。

白チャートの接続先は?1対1対応の演習がオススメ

 白チャートは入試基礎以上になると「辞書利用」としての使い方がイマイチなので、青チャートを参照用として手元に置いておくのもオススメです。基本的に解く必要はありません。わからない問題と出会ったときに青チャートに載っていれば典型問題として解けるようにしておく、それ以外は難問・奇問として優先順位を下げられます。お金はかかりますが、チャート式は辞書としての評価も高い。

 そして、白チャートのあとに取り組む参考書のオススメは『1対1対応の演習』です。白チャートが教科書基礎~入試基礎あたりまでなので、入試基礎~標準の典型問題を網羅する『1対1対応の演習』は優れた接続先と言えるでしょう。ここまで終えられたらMARCH・関関同立、準難関国公立の合格点を狙えます。特に文系の場合は(最難関以外は)典型問題を押さえられたときの得点率が高いため、そこまでアウトプット型問題集の思考訓練にこだわる必要はないと思います。ちなみにアウトプット型問題集なら『数学の良問問題集』あたりがオススメ。

 理系の場合はそもそも白チャートを本当に選ぶのか。それは数学IIICのような難しいものだけ白に替えるならまだしも、本格的に網羅的な対策を行うなら『入門問題精講→黄or青チャート』がベストな気もします。難関大理系志望なら最初から『1対1対応の演習』に取り組める力が欲しいところです。なぜかというと、限りある時間の中で取り組める問題数には限界があるため、入念な基礎固めを経てさらに入試標準の典型問題を数学IIICまで押さえていく(実質白チャートから青チャートへ)というのは現実的ではないからです。もちろん、開始時点での実力や時期によって結論は大きく変わりますが、理系の場合、教科書レベルはできるだけ手早く終えて、いかに入試基礎~標準までに時間を注げるかが受験戦略としては非常に重要だと思います。

『1対1対応の演習』のあとは『新数学スタンダード演習(以下スタ演)』がオススメです。『1対1対応の演習』が入試基礎を中心に標準まで手を伸ばしているのに対して、『スタ演』は入試標準を手広く扱っています。文系理系問わず『スタ演』まで終わらせられると、ほぼ全ての大学で合格点を十分に狙えます。『青チャート』を選んだ場合は『スタ演』と重複する部分も多いので、青チャートの例題だけ取り組んだあとにスタ演が良いでしょう。1対1やスタ演はチャート式よりもアウトプット寄りなので積極的に活用したい。

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