小論文の完全ネタ本 改訂版 自然科学/社会科学/人文教育/医療看護―レベル・難易度・特徴【レビュー】

タイトル小論文の完全ネタ本改訂版 自然科学 社会科学 人文教育 医療看護
出版社文英堂
出版年・価格2020/7/15 1210円
著者神崎 史彦
目的・分類小論文対策
問題・ページ数256ページ~448ページ
総合評価
対象・到達レベル小論文対策教科書基礎教科書標準入試基礎入試標準入試発展
※全統模試目安 [教科書基礎=40~45][教科書標準=45~50][入試基礎=50~55][入試標準=55~65][入試発展=65~70]
※入試基礎=日東駒専、地方国公立 入試標準=MARCH、関関同立、準難関国公立(地方医含む) 入試発展=旧帝大上位、早慶、医学部

対象・到達

【対象】
・小論文対策を行う人、現代文の成績を上げたい人
・各分野の社会的なトレンドを把握したい人、基礎教養を得たい人

【到達】
・小論文に必要なテーマの背景とキーワードの知識が身につく

 国公立は依然として学力を問う筆記試験が主流のままですが、私大では推薦入試の割合が約半分となっており、小論文対策をする受験生は意外と多くいます。国公立においては「筑波大学」が今後2次試験の学力試験を廃止し、面接と小論文による試験形式への移行を発表していることから追従する大学が増えてくることも予想されています。

 本書を取り上げた理由にはそうした背景もありますが、国語力を上げる方法としての「小論文」を考えたとき、他の参考書と比較しても情報量が多く、小論文に必要な論点を一通り押さえながら表現の基礎を学ぶにはちょうど良い参考書だったからです。社会科目の用語集のようにまとまっていて、社会科学だけでも521キーワードも取り上げています。推薦入試における形式的な小論文対策としては十分すぎる本書ですが、慶應SFCレベルの小論文対策が必要な場合には『慶應の小論文』などで別途対策が必要になります。言い換えると、本書はテーマやキーワードをインプットする“ネタ本”なので模範解答は参考程度に過ぎません。

本書の豊富なキーワードから大学・学部で必要となる常識的な用語の理解として用いても良いと思います。

現代文キーワード読解の延長として捉える

 国語の現代文対策の基本として『現代文キーワード読解』があります。現代文頻出のキーワードをまとめ、全てのキーワードに理解を深められる解説が付属しているものです。大学入試では大人でも頭を悩ませる文章を読まなければならないため、少しでも円滑に読み解けるように背景知識を備えておくために利用されています。

 本書は小論文対策に用いるものですが、部分的には『現代文キーワード読解』と変わらないため、現代文読解の基礎教養としても採用できます。加えて、表現に結びつけるための解説もあるので、現代文の成績に伸び悩む人の打開策としても採用できると考えています。本書のシリーズ4冊は「自然科学/社会科学/人文教育/医療看護」と分野別に分かれている点も使いやすく、志望する学部の傾向に合わせた一冊を選ぶと良いでしょう。

読解のために学ぶ小論文

 文章読解の力を上げるために文章を読み続ける。もちろん、それはその通りなのですが、必ずしも文章を読むことだけで力が伸びるわけではありません。現代文キーワード読解のように語彙力を強化することで読解力が伸びるように、読解力を向上させる要素は思っているよりも多様です。

 その一つとして筆者と同じ立場になること、すなわち自分でも論理的な表現を試みることで見えてくるものがあります。それは自転車の乗り方を観るだけでは「自転車」という乗り物の外観や機能の理解に留まるところが、自ら自転車に乗ることでわかることと同じです。一度でも経験すると、自転車に乗っている他人の様子をより細かく正確に想像できるようになりますよね。読解力だから読むしかないというわけではありません。

 特に小論文のような論理性を求められる表現は、現代文の論説(評論)とほとんど同じです。英語学習の際に音読を行うことで自身の英語力が総点検できるように、表現は自分自身にどれだけ論理が身についているかの指標にもなります。ちぐはぐな文章しか書けない人が正確な読解力を有しているとはなかなか思えないはずです。数学の記述然り、未熟ながらも論理の輪郭を意識できている人とそうではない人の差は大きい。ただ、あくまで小論文を通じて「論理」や「文脈」を肌感覚で理解するだけで、読み手をあっと言わせる表現まで身につける必要はありません。

本書は大人の学び直しであっても気軽に購入できます。各分野のトレンドを知るにはちょうど良く、同時に文章表現を身につけられるものとして有用です。

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