大学入試 肘井学の英語会話問題が面白いほど解ける本―レベル・難易度・特徴【レビュー】

タイトル肘井学の英語会話問題が面白いほど解ける本
出版社KADOKAWA
出版年2023/11/29
著者肘井 学
目的英会話問題対策
分量216ページ
評価
レベル日常学習教科書基礎教科書標準入試基礎入試標準入試発展
※全統模試目安 [教科書基礎=40~45][教科書標準=45~50][入試基礎=50~55][入試標準=55~65][入試発展=65~70]
※入試基礎=日東駒専、地方国公立 入試標準=MARCH、関関同立、準難関国公立(地方医含む) 入試発展=旧帝大上位、早慶、医学部

対象・到達

【対象】
・入試英会話問題の対策をしたい人
・入試問題に触れながら英会話の勉強をしたい人

【到達】
・入試英会話に必要な知識が一通り身につく
・日常会話で頻出の表現を覚えられる

 本書は2023年に出版された肘井先生による英語会話問題対策の参考書です。かつてのセンター試験では英会話問題(主に空所補充)が少ないながらも出題されていましたが、現在の共通テストでは見かけなくなり、国公立二次試験でも出題されず、主に私大入試で問われることが多いものでした。今でもその傾向は変わらないものの、以前よりもさらに出題頻度が下がり、具体的な対策を行うための参考書も絶滅危機に瀕している状況です。

 その中で本書や『英会話問題のトレーニング』、『会話問題のストラテジー』、『入試によく出る!英会話・口語表現の徹底トレーニング』が英会話問題をメインで取り扱う唯一の参考書と言って良いと思います。しかし、本書以外はどれも1990~2000年代に出版された古いものばかり。最近改訂されているものでは『Next Stage 英文法・語法問題 4th edition』や『英文法・語法 Vintage 4th Edition』など文法・語法問題集の中に英会話問題(口語表現)を取り扱った章がかろうじてあるくらいです。つまり、最新の入試傾向を反映した英会話問題の対策参考書は本書しかないと言っても過言ではない状況になっています

 余談ですが、リーディングにある英会話問題の出題頻度は下がりつつあるものの、実用英語を意識した問題傾向からも、リスニングセクションに英会話(口語表現)の要素が組み込まれていくと予想しています。あるいは共通テストの問題形式がユニークなので、その中で近いものが導入される可能性も十分あります。

英会話問題というと語弊があったかもしれません。口語的に独特の意味を含む問題のことです。例えば、本書にある「up in the air =未定で」や「keep the ball rolling =話をうまく繋げる」のようなものは勉強しないと想像もできませんよね。

本書の構成

問題は別冊(全て過去問)、語彙・会話表現のPOINT(頻出フレーズと文法)・口頭チェックリスト
第1章 英会話の提携表現をマスターする
第2章 長い会話文を攻略する
第3章 ハイレベル会話問題を攻略する
会話・口語表現のファイナルチェックリスト
※無料音声ダウンロード付き

 肘井先生の著書らしく全体的に簡潔にまとまっています。英会話問題は問われるところがだいたい同じなので、先に述べた参考書一冊仕上げたら十分です。以下の解説のように、仮に全くわからない表現が出てきたとしても、消去法や文脈から推測してある程度導けます。配点も高くない英会話問題にはあまり時間をかけたくないでしょうから、その意味でも肘井先生の参考書はオススメです。

空所の前にアレックスの「どうしてた?」という問いかけがあり、空所の後ろには「常におかしなことが起きているね。」というキアヌの返答があることを確認する。さらに、アレックスが「君はいつも忙しいやつだもんね。」とあることから、キアヌが忙しいとアレックスはわかっていることを表す④Oh, you know me.「まあ、ご存じの通り。」が正解。他の選択肢は、上記の文脈には合わない。
肘井学の英語会話問題が面白いほど解ける本 P43より引用

 しかし、意外と収録語彙は多く、全ての語彙と表現を覚えようと思うと時間がかかるかもしれません。だいたい語彙は500語以上、表現は228あります。語彙に関しては一般的な単語帳で見かけるものも多くありますが、会話の中で使用される意味が取り上げられている点は注意です。

大人の学び直しにも向いているか

 結論から言うと、思いのほか良いと思います。youtubeなどで海外の人の日常会話を聞いていると出てくる表現が多く収録されていますし、本書を日常会話の基礎知識と語彙、フレーズ集と言われても納得する内容です。スラングではなく、ネイティブが普通の日常会話で使用する表現が中心なので勉強する価値を感じさせます。

 逆に本書以外で会話に関わる基礎知識を学べる書籍はあったでしょうか。いや、もちろんあるのですが、大学入試向けならではのわかりやすさと問題形式を通じた理解、無料音声ダウンロードなどを総合的に評価すると、本書に匹敵するものはかなり少ない気がします。以前に紹介した関先生の『スピタン888』にしても受験生から大学生向けのものです。

 大人の英語初心者向けの書籍は中学・高校で習うものを無駄に噛み砕いたものも多く、それなら参考書で学び直した方がより良いと思うことが少なくありません。文法は避けて通れませんし、単語も中学・高校で会話に必要な重要単語は網羅されています。日本の英語教育は批判されることも多いですが、基礎知識を押さえることに関しては全く間違っていないと感じています。

大人の学び直しで大学受験向けの参考書を取り扱う理由も、理解させる工夫と競争によるコスパの高さが顕著にあるからです。他方でフランス語やドイツ語のような第二外国語の場合、大学受験向けの参考書は全くと言っていいほどありませんが、次は大学生向けの書籍、大学の授業で使用される教科書が優秀です。例えば、『Horizonte―東京大学ドイツ語教材』や『Promenades: 東京大学フランス語教材』は長文の教材として使いやすくなっています。

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