大学入試 英文法QUAD 文法問題+読解・英作文の要点300―レベル・難易度・特徴【レビュー】

タイトル大学入試 英文法QUAD 文法問題+読解・英作文の要点300
出版社Z会
出版年2024/10/20
著者米山 達郎、佐藤 進二、瀬崎 友博 
目的高校英文法問題集
分量520ページ
評価
レベル日常学習教科書基礎教科書標準入試基礎入試標準入試発展
※全統模試目安 [教科書基礎=40~45][教科書標準=45~50][入試基礎=50~55][入試標準=55~65][入試発展=65~70]
※入試基礎=日東駒専、地方国公立 入試標準=MARCH、関関同立、準難関国公立(地方医含む) 入試発展=旧帝大上位、早慶、医学部

対象・到達

【対象】
・1冊で文法問題集を終えたい人
・志望校の偏差値60まで
・文法を問題形式で定着させたい人

【到達】
・全統模試偏差値60まで
・様々な文法問題に対応できる

 本書は当サイトで推している『文法語法良問500』の著者である佐藤進二先生が共著として名を連ねていることから気になっていました。2024年にZ会から出版された文法問題集です。共通テスト以降、文法の単独問題が減ってしまったため、問題集は特殊な位置づけになりました。共通テストでは出題されず、国公立でもほぼ出題されません。私立では変わらずに出題されていますが、減少傾向にあると言って良いと思います。

 では、文法問題集に取り組む必要はないのかというと、直接的な得点には繋がりにくくなったものの、結局のところ、文法を押さえていなければ問題は解けないため、問題集1冊くらいは解けるようにしておくのが「無難」という認識に落ち着いています。つまり、試験で得点するための問題集から“文法知識を固めるための問題集”に変化し、効率良く固められる問題集が評価を高めています

 本書のコンセプトはその点でよく考えられています。300の必修英文法を4種類の問題で構成していることで実質1200問の訓練となり、さらに文法知識の確認に留まらず、読解や英作文で役立つポイントまで押さえた建設性の高い問題集に仕上がっています。必修レベルの英文法を300にまとめている点は程良く、だいたい入試標準レベルまでは本書一冊だけで網羅されていると言えるでしょう。

使い方の注意点

 一般的な文法問題集(NextStageVintage)と比べると、まず本書ではイディオムと口語表現、発音・アクセントなどが押さえられていない点に少々不足感を覚えるかもしれませんが、4技能への発展も意識された解説から文法(語法)に関しては優位性があります。先に述べた文法問題集の位置づけに最も適しているのが本書です。

 しかし、実質1200問とは言え、300問の形式を変えただけではあるので、使い方次第で効果は大きく変わります。端的に言うと、問題を覚えて解けるようになっても意味がないということです。コンセプトは素晴らしいものの、そうした頭の使い方を誘発しやすい構成にもなっています。なので、空所補充なら空所補充だけ、つまりROUND1を全て解き終わったあとにROUND2に移る方がより良いと思います。あるいは問題形式ごとにポイントをしっかりと意識して取り組むか。問題例文は見直しやすいので音声の使い勝手は悪くありませんが、解説にある読解と英作文のポイントは正直物足りません。運用の観点からもう少し深く触れてほしかったです。

 難関大志望には積極的に薦めにくいものの、文法の単独問題が減った昨今、地方国公立や中堅私大志望、および大人の学び直しには良い選択だと思います。本当に実質1200問と言えるだけの取り組みになるのか。それだけが不安です。

同じ問題例文ではなく、同じ論点を持つ別の問題例文ならさらに良かったかもしれません。工夫次第で化けそうな惜しい問題集です。

文法語法良問500との比較

 文法ならまだしも、語法の問題は量が多いほど安心できます。『NextStage』や『Vintage』の解説は丁寧とは言えないものの、レイアウトは見やすく、必要な知識が整理されている点は評価が高い。単語帳のようにその解説から暗記できる人にとっては不足感がありません。本書は得られる知識量という意味ではどうしても不安です。

 しかし、現役生の多くは丁寧な解説に何度も触れながら問題を解いた方が丸暗記に陥りにくいでしょう。『NextStage』や『Vintage』はすでにそれなりの知識を備えている人向けです。その点で『文法語法良問500』は一つの問題を解いたあとに知識を広げてくれる解説が非常にわかりやすく、スピーキングとライティングのTipsもコラムのように読めて英語全体の理解を深められます。しかも重複無しの1500問(論点の重複はある)。基礎~標準の文法を固めるなら量は必要であるという考えです。とは言え、欠点がないわけではなく、レイアウトの整っていない部分があること。誤文訂正に問題例文の音声がないこと。これらは明確な欠点です。

 本書は『文法語法良問500』を1冊にまとめたかのようなコンセプトは素晴らしいのですが、このコンセプトにしてレイアウト的に足りず、期待感に応えられるだけの解説になっていない気がします。一般的な文法問題集よりは充実した解説で高く評価できるのですが、これなら複数冊に分割してもっと解説を充実させた方がより良い、つまり個人的には『文法語法良問500』が高い完成度であったことを実感する結果になりました。

必修英文法を300にまとめ、4つのアプローチから定着させる構成は唯一無二です。『文法語法良問500』の3冊は量で定着させることを目指しているので、それが過剰に感じられたときには本書をオススメします。優れた問題集であることは間違いありません。使い方だけ注意。

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