加筆修正の履歴
2026/01/08 AI時代の参考書についての文章の後半を全体的に書き直しました。
2025/12/12 一部読みにくい箇所を修正しました。
2025/12/09 チ。―地球の運動について―の文章の一部を修正しました。
2025/12/07「数学の難問対策、特に『真・解法への道』のような講義調の、考え方そのものから仕上げていくものはAIによる代替がまだまだ利きません」を語弊がないように削除しました。
2025/12/05 AI時代の参考書について―最終的に残るものは過去問の文章の後半を修正しました。
2025/12/03 サムネイルと読みにくい箇所を修正しました。
AI時代の参考書について―最終的に残るものは過去問
2025年を振り返りながら。一昔前だったら学習塾や予備校、進学校などでしか共有されていなかった効率的な勉強法に誰もがアクセスできるようになりました。参考書の質も全体的に向上し、選択を間違わないための情報も充実しています。さらに学校教育にもAIが導入され始め、本当に生成AIによるサポートが必須になってきている状況です。実際に生成AIによる補完は優秀で、大学受験においてはAI利用を前提にアウトプットの質をどこまで高められるかどうかが勝負になっていると言っても過言ではありません。インプットが単一の知識に焦点を当てた行為であるのに対して、アウトプットはもっと総合的な思考力が要求されますから上手に取り組めたときの経験値はインプットの比にならないほど大きいのです。
端的に言えば、AIと建設的な対話をしているだけで知識は見る見るうちに増え、物事を科学的に合理的に効率的に論理的にも考えられるようになっていくということ。少なくとも教育分野においては今後のAIネイティブ世代の台頭に疑いの余地はないと思います。人間の主体性とパフォーマンスを考えたら納得ではあるものの、AIにコーチしてもらった方が伸びることも報告され始めていますから、下手に人間が介入すると学習者の効率を大きく落とす懸念まである時代です。ただ、そうしたAIとの対話の質は学習者本人の能力に依存していますから、AIだけで誰でもというわけではありません。特に対話の質、つまり基礎学力とコミュニケーションの部分は強く影響しているでしょう。例えば、友人との会話を想像してみてください。多様な見方を提示してくれる友人に対して、自分自身がキャッチボールできるだけの知識と考察がなければ切磋琢磨になりませんよね。ここに人間による指導の意義を求めるなら、AIの能力を引き出せる人材に成長させることだと思います。属人的な指導に収めるのはリスクが大きすぎます。
なお、AIによって学習塾や予備校の不要論が散見されるようになってきましたが、個人的には小中学生の環境的利点や人間的指導が活きやすい最難関大に関してはまだ価値が残っており、とは言えAIを前提に指導を構築すること自体は必須になっていると評価しています。指導形態が変化していくことは間違いないでしょう。一方、学校教育における勉強がAIサポートによって圧縮されたときには、学習塾や予備校までわざわざ利用しなくなるということも考えられます。いずれにしても、一般人にとっての勉強はむやみに他人の手を借りなくとも良い時代に突入しつつあると思います。
では、AIを活用していくための基礎学力の向上には何が必要か。従来からある地道な勉強です。これは言い換えると、一部の優秀な子を除いて、小中学生にはAIとの両輪をそこまで意識する必要はないと判断しています。なぜなら、高校課程の量と複雑さに比べて、小学・中学課程の勉強はシンプルだからです。一方、高校生には将来を想定してもAI利用がほとんど必須と言っても良いのですが、基本的には参考書による独学で成長できるだけの思考力は必要になります。参考書を読んでも成績を伸ばせない場合、AIによる学習効率はたかが知れていますから、まずは中学課程までの復習、そこから参考書を読んで理解して、わからないところを言語化できるようになってからAIを少しずつ利用していく方がより良いと考えます。
また、参考書を選ぶ際は属人的と言いますか、一つの参考書に囲い込むようなものは避けた方が無難です。今はAIによる拡張が前提なので、できるだけ発展的な考え方に気づかせてくれる参考書が良書と言えます。例えば『数学入門問題精講』や『新数学スタンダード演習』など。参考書によって「この方法さえやっていればよい」とアドバイスするものがありますが、そういったものよりも少々難解でも本質的な解説を提示して考えさせてくれるものを選びたいのです。せっかくAIによって理解の時間が減らせるわけですから、本質に迫る方向性が大切です。参考書は著者のブランディングやマーケティングによって思考を閉じ込めてしまうものがあるということ。つまり、AIが存在しても末永く読み返したくなる参考書を軸にするべきということです。
2025年に評価を上げた3冊
英語学習者に“必須”と言っても良いほど大きく評価を上げました。英文法に関しては高校英語までしっかりやるべきですが、単熟語を英会話のためだけに厳選するなら『DUO Basic』と『DUO elements』の2冊になります。この2冊だけで日常会話に必要な単語のほとんどを網羅できますし、コアイメージという英語学習における最重要な視点を獲得できる単語帳としても非常にオススメです。
なぜか英語学習に取り組んでいるにもかかわらず、発音の参考書を避ける人がいます。どれほどマニアックな単語を知っていても、発音が疎かなだけで英語力が低く見られる懸念があります。逆に日常会話程度の単語しか知らずとも、発音が綺麗ならそれだけで尊敬されるはずです。聴覚情報の質を上げるためにも発音学習は必須。「発音の教科書」シリーズの4冊が日本人にとってはかなり使いやすく、発音に関わる知識の大部分を網羅できます。
大学入試用ではあるものの、極めて高い完成度を誇る単語帳です。結局、この単語帳以上のものは出てきていません。[第8版]では単語の頻出ランクが追加され、全ての見出し語に例文と音声も付属しました。その他のTipsも地味に役立つものばかりで隙がありません。当サイトでは『DUO3.0』を高校英単語の高速暗記用として、その後に『速読英単語』シリーズを多読参考書兼単語帳として採用しています。現役生なら『速読英単語』を使い倒す方針を強く推奨します。
ちなみに以前に紹介した『普通の英単語』は高く評価していましたが、基本単語の使い方やニュアンスといった英米的発想に関わる部分がAIによってほとんど代替できてしまいました。AIの信憑性に不安はないとは言えないものの、その単語の意図や場面、頻度、ニュアンスといった情報を余すことなく得られてしまう現状では積極的に推奨する理由がなくなりました。英米的な発想の何もかもわからないとしても『1億人の英文法』を思考の土台にする方がわかりやすいでしょう。
英語ばかりになってしまいましたが、他にも『方程式・図形・関数からとらえる数学の基礎 分野別標準問題精講』は唯一無二のコンセプトから評価をさらに上げていく期待があります。出版されたばかりだったので候補から除外。数学は科目の特性として元から優れているものの、参考書全体を見ても良書は多いです。
チ。―地球の運動について―
最後に、これは学習意欲を高めるマンガ・アニメの個人的なオススメです。天動説が絶対的な時代に地動説を追い求める者たちの生き様がフィクションとしておもしろく描かれています。人間の好奇心は身分や階級によって阻むことはできない。本作品は歴史や科学について直接的なことが学べるものではありませんが、真理を探究する者たちの姿勢や覚悟には共感を覚えるところが多々あり、主題歌にも感動し、ひとえに学ぶこと(知の探究)の素晴らしさを実感できます。子供から大人まで楽しめると思います。
そもそも私たちにとって知を求める意味とは何なのか。これには無数の答えが考えられますが、一つ挙げるとすれば、何も学ばない人間は動物とほとんど変わらず、感情もコントロールできないために自らの本能の赴くまま生きるしかなくなります。当然それでは秩序も関係性も維持できず、身近な人間関係(夫婦、友人、職場など)ならば破綻してばかりになるでしょう。知を求める、勉強するというのは単なる知識の充足だけでなく、他人への優しさにも確実に繋がっています。また、頭を正しく使える人は物事を長期的に捉えることができますが、そうではない人は目先のことばかり、短絡的で少ない価値基準の中で判断してばかりになります。目先、つまりは自らの感情や欲求、バイアスに振り回されてばかりになるということ。
頭を正しく使える人、いわゆる頭が良い人としましょう。頭が良い人は多様で複雑な状況の中でもバランスを保つことができます。結論を焦らず、多様で複雑な状況を観察し、できるだけ最適な答えを導こうと力を尽くせます。賢者にはいつだって沈黙の意味がわかるはずです。
これは物事に対する姿勢の話に過ぎませんが、知を求めれば求めるほど見えないものが見えてくる、人間の思考は関数的で変数が追加されたら答えまでのプロセスが複雑になります。答えるという行為が段々と難しくなっていくのです。頭が良い人特有の理知的で慎重、針の穴に糸を通すような繊細な受け応えはまさにそれを表しているとよく思います。もっとも現実にはそうした答えよりも、短絡的で少ない価値基準の中で導かれたある種の極論、共感しやすさだけに魅了されてしまう人が少なくありませんけどね。








